俺にすればいいのに。
「先輩! こっちです!」

「優くん、早いね」

「楽しみすぎて早く着いちゃいました」


先輩の私服、初めて見るなぁ。


花柄のワンピースで、髪はハーフアップにまとめていた。


やばい、可愛い。

可愛さ倍増してる……

もうすでに心臓がもたない。


「……優くん?」

「え、あ、すみません! えっと…」

「今日はどこに行くの?」

「ま、まずは水族館です」

「クラゲいるかな!?」

「いると思いますよ」

「楽しみ〜! 早く行こ!」

「あ、先輩! そっちじゃないですよ!」


目的地とは反対の方向に駆けていく先輩。

4月から専門学生なんだよな?

小さな子どもみたいで思わず笑ってしまう。


「…もう! なんで笑ってるの!?」

「子どもみたいだなって」

「う、うるさいなぁ! ほら、行くよ!」


先輩の顔が少し赤い。

そんなところも愛おしく思えてくる。


「拗ねないでくださいよ〜」

「拗ねてなんかない!」

「じゃあ、これで許してくれますか?」


そう言って俺は、自分の指を先輩の指と絡ませた。

いわゆる“恋人繋ぎ”ってやつだ。

自然とこんなことができるなんて
自分で言うのも変だけど、今日の俺はどこかおかしい。


「優くんのこういうところ…ずるい」

「先輩だってずるいところありますけど?」


俯いている先輩の顔を覗きこんで
悪戯っぽく笑う。

先輩はさっきよりも顔を赤くして「そういうところ!」と言った。
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