花瓶─狂気の恋─

....だけど、僕は好きな人がいたんだ。それも同性...」


真帆の何かが崩れる音がした。その何かはあまりにも大きく、真帆の思考は停止していた。


「晶子ちゃんと付き合った泰河っているよね。中学時代からの付き合いなんだけど、僕はずっと泰河が好きだったんだ。
異性と付き合うのが普通、僕はその普通に向かおうとしたんだけど、やっぱり泰河に対する気持ちは消えなかった。それは泰河が付き合ったとしても....
だから、真帆ちゃんの気持ちには答えられない。ごめんね...」


悠雅の声が右から左へと流れる。真帆は全身から力が抜け、これ以上にない絶望感を味わっていた。
悠雅はそんな真帆の姿に心を痛ませていた。伝えてよかったのか分からなかったが、伝えなくてはならない事だと思ったのだ。


「ごめんね真帆ちゃん....真帆ちゃんは素敵だし、これからもっといい人と巡り会えると思う。だから、僕の口から言うのもあれだけど...前を見て生きて欲しい。

じゃあ僕そろそろ行くね....本当にごめん...」


そう言うと悠雅は真帆の家から去っていった。残された真帆は何もしなかった、だだ絶望感に浸っていた。まるで絶望というぬ間にハマるとそこから這い出でる気力すら無い感じだった。
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