花瓶─狂気の恋─

色鮮やかだった世界はモノクロへと変わり、息をするのすらやめてしまいそうだった。

真帆は何も考えずに外へ出た。目的地は決まっていない、ただ弱々しく歩いていた。何かをせずにはいられなかったのだ。
どうにかして気分を間際らしたいがまるで晴れない。むしろ孤独感が一気に押し寄せてきた。


家近くの公園まで歩いていると、背中の一点が急に熱くなった。熱湯だとかそんな程度ではなく、マグマのような塊を押し付けられたような感覚。
その事に気が向いた時、真帆の身体の力が無くなる。膝が地面に落ちて、人形のように力無くして倒れ込んだ。意識が朦朧とし、吐き気が沸き起こり視界がぼやける。

真帆は力を振り絞って出来るだけ後方の方を見ると、一人の人物が血で濡れている包丁を手にしていた。
そこから更に目線を上げると、その人物の顔を見れた。口角を上げてだらしなくヨダレを垂らしていた。薄い眼鏡の奥からは野心に満ちた目で真帆を見ていた。その人物に真帆は見覚えがあった。

その人物とは矢内 桃だった。部活でも大人しそうなイメージがあった彼女が真帆を後ろから包丁で刺したのだ。


「貴女が悪いんですからね!!悠雅先輩は私のモノなんですよ!あははは!あははははは!!」
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