運転手はボクだ

戻ったら鮫島さん親子に先にお風呂に入ってもらう事にした。
千歳君はいつもより起きている、もうとっくに寝る時間だろうと思ったから。

丘には長く居た。言葉なんてほぼ要らなかった。…静かだった。とにかく、星が綺麗で眺めていた。
千歳君、帰りはおんぶされていた。


コンコン。

「羽鳥さん?」

「はい?」

奥さん…。

「今、少し話さない?いい?」

「は、い」

下に降りた。珈琲を入れてくれた。キョロキョロしたが、ダイニングにご主人は居なかった。

「あ、主人?主人はもう休んだわ。年の差夫婦だから。フフ」

「…あの」

何の話だろうと思った。と、いうより…。

「鮫島さんの事、どう?あ、これは私の…本当にお節介なの」

…そうだろうと思った。わざわざ鮫島さん親子がお風呂に入っている時に部屋に来たから。

「まだ…何とも…そんなつもりは。まだ、と言うのも変ですね。本当に、偶然会ってご迷惑をかけてしまって。お世話になって…。そんな人ですから」

「ううん。まだって事は、意識はしたって事?」

少し顔が近くなった。

「…あ。…意識と言いますか…んー、こんな風に関わって、親しくなって…、もし、こんな事が頻繁にあるようになって、いい人なんだ、から…気持ちが変わってしまったら…それはどうなんだろうって」

「好きになっては駄目なの?鮫島君は」

「え?、…あ、なんていうか、直接の答えでは無いですけど、鮫島さん、そういう気持ちは持たないようなことを言っていたと思います」

「本当に最近会ったばっかりなの?」

「え?はい、本当です」

「随分、いろんな事、短時間で話してると思って」

「それは多分…当たり障りのない、私が他人だからじゃないでしょうか」

「…まあ…話して大丈夫だと思える人でないと話せない事だと思うけど…。
それを聞いたから、ずっと一人でいると思ってるの?」

「それは、実際に好きな人を相手にして、その人に言う事だと思います。だから、私では解らない話です。その程度の話だと…」

「まあ、そう思うならそう思っておく?」

え?

「4年…まだ4年。やっと4年。子育てもしたことがなかった男が、生まれたばかりの赤ちゃんから…よく頑張ってる…」

「はい、とても愛情を持って。いい親子関係だと思います。いい子に育ってますね千歳君…。あ。
会って日が浅いのに…私ったら、知ったようなこと…」

「フフ、そうね。…あ、タイムリミット」

テーブルの上に置いていた手をポンポンとされた。

「え?」

「お風呂から出たみたいよ?じゃあ…貴女の気持ちも考えず、かき乱してごめんね?」

え、…。かき乱す…?

「えみちゃ~ん?でたよー」

「あ、こっちに居たんだ。出たから入って?」

「あ、はい」

「じゃあね?私はいいと思う。貴女なら。って、私も会ったばっかりなのにね?」

ポンポンと今度は背中に触れられた。


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