運転手はボクだ
「タオル、洗ってなくても、君の手で家に持って来たら、返しに来たって、気が済む?まあ、それは屁理屈、冗談だけど。
千歳もお腹空いたって言うし、君もまだだよね?」

「それは、はい。帰る途中でしたから」

「だよね?で、大したモノがある訳ではないけど、帰ったら直ぐ食べられるように段取りしてあるから。一人分増えても大丈夫だし、いい?」

だから一緒にって事ですか?

「あ、ごめん、もしかして、約束とか、あったかな?」

う、…悲しいかな、それはないです。

「フ。あ、ごめんごめん。その感じだと大丈夫そうかな?」

う゛、何も無いってバレてるし。

「あ、はい。ありません。帰るだけです」

「なら、いいかな?千歳も…どうやらその気みたいだし。一緒に食べてやってくれるかな」

そう、手をずっと握られていた。顔を向けると、フフフって笑ってる。…可愛い~。こっちも自然に笑顔を返してしまう。
私、気に入られちゃったのか、な?

「あっ。はぁ…ごめん…」

「え?」

片手で顔を擦るようにして口を押さえたようだ。

「俺としたことが…うっかりしてた。帰りは送れないかも知れない、大丈夫?」

よく解らないけど、直ぐ気がつかなかった事に、かなり落胆してるように見えるけど、何かあるのかな…。

「え?はい、大丈夫ですよ?」

家がかなり遠くなるのかな?別に今日に限らず、いつも一人で行動してるから、どこからだろうと帰る事に何も問題はない。

「帰ってご飯を食べさせたら、お風呂に入るだろ?」

え?お風呂?私の事?…私がよそのお家で、お、お風呂に?!違うよね、えっと、確か、さめじまさんって呼ばれてた。さめじまさんちの日常の事かな…。

「ん?ああ、千歳がね」

そうですよね~。

「そうなると、もう、無理して起こしてまで連れ出したくないんだ」

なる程…。お風呂から出たら眠っちゃうから。
ん…今日、ママは…居ないのかな…。
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