運転手はボクだ
丁度、二人の着替えを持って入ろうとしたタイミングで中から声がした。

「…いいか、千歳。私と留守番だ」

「うん。はなび、できる?」

「ああ、その代わり、空一杯の花火じゃなくて小さい花火だ」

「うん!」

「よし、そろそろ、恵未ちゃんを呼ぶか」

「うん!えみちゃ~ん。えみちゃ~ん、きて~」

さっきまで漏れ聞えていたのとは違って、大きく反響した。

少し間をおいた。

「は~い。…入りますよ?」

「大丈夫だ~」「きて~」

本当でしょうね。社長まで、出て座ってるんじゃないでしょうね…。

カラカラと開け、まず脱衣所に。着替えを置いた。

「千歳君?いい?」

「う~ん」

…ちゃんと、社長は湯船に入ってますように。

浴室の戸を開けた。

…ほぅ。千歳君はシャンプーハットをして座っていた。ゴシゴシと泡を立て自分で頭を洗っていた。

「えみちゃん、すごい?しゃちょうがみてるから、あらっていいって」

あ、もー、…可愛い。ブルーのシャンプーハットの上で手を一生懸命動かしている。何をしてても可愛い。

「うん、凄い凄い。もう洗えた?どう?」

「うん。だいぶゴシゴシしたよ」

「じゃあ、流そうか」

「うん」

こういうのが、成長っていうのよね。日々、自分でできることが増えていくんだ。

「大丈夫?目、痛くない?」

「うん、いたくない」

「んん。私も洗ってもらおうかな」

…ちゃんと流すまでは無視無視。

「はい、終わり。今度は体、ゴシゴシしようか」

「んん。私も恵未ちゃんにそんな風にゴシゴシされたい」

…する訳ないでしょうに。

「えみちゃん、しゃちょうもゴシゴシって…」

「いいのよ~。社長は大人だから自分でちゃ~んとできるから。…はい、流すわよ~」

「うん!
えみちゃん、きょうはいっしょにはいらないの?」

「うん、今日は、社長と入ったでしょ?」

「うん」

「だから、もうおしまい。さあ…出ようか」

「うん」

「恵未ちゃん…」

私は?みたいに募らないでください。

「あ、社長は、まだ。まだ出ないでください、いいですね?まだ、ですよ」
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