運転手はボクだ
「はぁ、抜けなくなるかと思った」

泡をすっかり流して、恐らく無理矢理ギューギュー被ったであろうシャンプーハットを、ギューギューと、引き上げ外した。

「頭に輪…、跡がついてます…」

「…これでは悟空だな」

鏡に映った顔を、妙な決め顔で、右から左からと、見ていた。

…。

もう…こっちは、どうしてくれるのよ…。

「…そうですね」

悠長に話している状況ではない…これでは。濡れネズミになったじゃないですか。

「もう、いっその事、脱いじゃう?一緒に入れば?」

「…無理です」

…もう、本当に…。

「…体は洗ったのですか?済んでるなら出てください、お願いします」

「…まだだよ?」

…はぁ。私だって、このままでは…。本当に…もう脱いでしまいたい。

「…恵未」

え?

「一緒に入ろう」

え?何?急に…、真面目なトーンで。恵未…なんて。

「は、入る訳ないじゃないですか」

脱衣所で脱げばいい、タオルを巻いて一目散に部屋に走れば。それは解ってるけど、社長が居てはおちおち脱げない。ここには鍵がないから。
いっその事、濡れたまま部屋まで走る?…。

「何も、しない」

…は、ぁあ?いやいや、は、裸で一緒に入るだけでも駄目でしょ?

「一緒に入るだけだ」

…まさか。

「千歳とは一緒に入るじゃないか」

…言うと思った。はぁ。

「もう…、何でもかんでも、同じようになんてできません!子供と大人なんですよ?
貴方は、大人の男です。自覚、ありますよね?一緒になんて入れません」

こんな事、言わなくても解ってる癖に。…どんだけタガが外れたら気が済むのー?

「恵未…。着たままでもいいから…」

え?

手を引かれた。あ゙。え、有り得ない…。体が浮いた。

「キャッ!」

抱き上げられてそのまま湯船に。…う、そ。

「はぁぁ。…まあまあ、満足だ…」

へ?

「着たままだから、大丈夫だよな?…」

変な納得をさせられようとしてる。ぁ…後ろから抱きしめられた。

「…先に出るから。あと、脱いでゆっくり入るといい。着替えは浴衣を持って来ておいておくから」

そう言うとザバーッと勢いよく出ていった。プ、ハ。…さっきから社長の裸は見せられてはいるものの……それはどうなの…。

はぁ、一体…。何を考えているのやら…。いくら子供の時にできなかったとはいえ…。
私は…お母さんじゃないのですよ?
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