運転手はボクだ
「そんなの…」

恥ずかしい…。一瞬だけど、想像してしまった。…もう。
バシャバシャと顔にお湯をかけた。

「そろそろ上がったらどうだ?逆上せるぞ?」

そうだけど、でも…上がれないでしょ?大体…話しかけてないで、そこからいなくなってくれたらいいんです。
ドアが二重にあっても、いつまでもそこに居られると出られないでしょ?

「待ってようか」

「え?」

…もう、いいから…そこから移動してください。出られないです。
待ってようかって。…どういうつもり?
か、体を拭くって事?

「何をするつ…」

「冷たいお茶を入れてね」

あ。…また。言葉の罠…意地悪に引っかかりそうになった。…ほぼ思う壷…。

「ハハ。期待したか?じゃあ、あっちに行くから。本当だ」

期待?期待なんて…はぁ…。本当、意地悪だ。…も゛う!

わざとザバッと音を立てて出た。
探るように戸を開けた。…ん。脱衣所の中には居なかった。
素早く体を拭いてバスタオルを巻きつけた。…裸に直に浴衣は短距離の移動でもセクシー過ぎる。直ぐに汗ばむ体が透けてしまう。

カラ、カラ…カラ、カラ…。
目の前にはいなかった。…ふぅ。左右を確認した。…はぁ、どうやらいないみたい。
家の中で変にドキドキしないといけないなんて…大体…悪戯が過ぎるのよ…。今のうちに…。
小走りに部屋に走った。

「あっ」

なんて事…。

「はい、お、茶」

部屋の前に“居た”。氷の入ったグラスを差し出された。

「はい。待ってるって言っただろ?嘘じゃない、本当だろ?…はい」

神出鬼没…はぁ。確かに、言葉通りですね。取り敢えず受け取った。…飲んだ。冷たい…気持ちいい…。

「今夜がヤマなんだ」

「え?」

…流石に意味が解らない。全然意味が解らない。

「そろそろ折り合いをつけないといけないんだ」

何が山で、何に折り合いをつけないといけないのだろう。全く解らない。考えながらも冷たいお茶に心が奪われた。
ゴクゴクと飲み干した。フ…美味しい…。
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