four seasons〜僕らの日々〜
舞台の上では、蓮と椿は心から愛しあう『本当の恋人』だ。手を繋いだり、抱きしめあったりするシーンもある。しかし、誰にも止めることはできない。お芝居だからだ。

ジュリエットとロミオがバルコニーで話すシーン。椿がシナリオを書いていて、一番気に入っているシーンだ。

『ロミオ、お願いがあるの』

『何?』

『私はあなたと引き裂かれてしまうなら、何もかも捨てるわ。……だからあなたも、全てを捨てて私を攫ってくれる?』

『……絶対にそうすると誓うよ』

『ロミオ、愛してる』

そう言って椿は手を伸ばし、蓮に顔を近づける。キスをするつもりだった。

練習ではなかったシーン。椿が思いついてしたことだ。

物語の中だけでも、夢を見せて……。椿の小さな願いだった。舞台から降りれば、椿だけが好きな関係に戻ってしまう。それが嫌だった。

翔には諦めると言ったが、蓮を見ているとできなくなってしまう。まだ一緒にいたいと思ってしまう。

しかしお互いの口が重なる前に、蓮は椿を抱きしめた。

「ごめん…。できない…」

震える声で蓮は椿の耳元で囁く。その瞬間、椿の中で想いが崩れ落ちた。
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