four seasons〜僕らの日々〜
まだ心のどこかに、蓮への想いがある。椿はそっと胸に手を当てた。

これから演じるのは、椿がずっと憧れていた人生だ。愛されて、大切にされて、幸せに満ちた人生ーーー。

蓮とそうなったらいいのに、と思い描いたシナリオ。

緞帳が降りているため、客席はどうなっているのか全く見えない。

その客席の中に、蓮の好きな人がいる。美桜がいる。椿は何度も深呼吸をした。

緞帳がゆっくり上がっていく。眩しいくらいのスポットライトが、舞台を照らした。



『初めまして。僕の名前はロミオ。あなたとずっと話したかった』

『私の名前はジュリエット。……私も話してみたかった』

ロミオの蓮とジュリエットの椿が出会う。恋の物語が始まる。

舞台の上で、二人は見つめ合い話す。そして蓮が椿の手を取る。

『一緒に踊ってください』

『……はい』

繋いだ手の温もりが椿を包む。このまま時が止まってしまえばいいと思ってしまった。このまま舞台に吸い込まれて、永遠にロミオとジュリエットと演じていたいと思ってしまった。
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