four seasons〜僕らの日々〜
甘いものが好き。トマトが苦手。得意科目は英語と国語。体育と数学が苦手。好きな花は桜。恋愛小説が好き。

美桜のことをどんどん知っていく。しかし、知れば知るほど美桜の隠している心の傷も見えてしまう。

美桜の好きな人は、すでに隣に恋人がいる。そんな禁断の想いを抱えて、美桜が苦しんでいるのを、男の子は嫌というほど見てきた。

しかし、美桜の好きな蓮は、椿と付き合っているのに、椿のことを好きではないと観察していてわかった。そして蓮も美桜のことが好きだと気づいた。

美桜を傷つけているのに、渡せない!

男の子の中に、そんな思いが生まれた。

心の氷は美桜を想うほど、溶けていく。そして、初めて美桜と話した瞬間、心を覆っていた氷は全て消えた。

「美桜は俺が守る…!」

少年は氷でできた剣を握りしめながら、呟いた。

美桜は男の子の前で、たくさん泣いた。蓮のことで傷つき、何度も泣いた。

その度に男の子は美桜を抱きしめて、優しい言葉をかけた。美桜の温もりが、懐かしい記憶を呼び覚ます。お母さんが抱きしめてくれた幸せな記憶ーーー。

「大丈夫だ。俺が必ずそばにいる」

体育祭の賑やかな声が響く教室で、泣きじゃくる美桜に男の子は優しく抱きしめる。

「お前が初めてなんだ……。俺にもう一度心を与えてくれた」

震える声で、男の子は言った。目の前が少しずつぼやけていく。

「だから、笑ってほしいんだ」

涙が一筋、男の子の目からこぼれた。
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