four seasons〜僕らの日々〜
冷たい目で睨みつけ、学校を出たあとも、あの女の子の顔が頭から離れなかった。

男の子の凍った心に、優しい春風が吹いた気がした。氷が少しずつ溶けていく。

あの女の子のことが、気になり始めた瞬間だった。



四月も終わりに近づいた。男の子はずっと一人でいる。しかし、今日は違った。

「おい、お前あいつとよく話してるよな」

空が女の子と話す姿を見て、男の子は思い切って空に話しかけてみた。女の子が空や誰かと話していると、少しモヤモヤしてしまう。

「あいつって……?」

話しかけてこない男の子が自分から話しかけてきたので、空は少し驚いた様子で男の子を見つめる。周りのクラスメートも同じだ。

「無駄にテンション高い女と一緒にいる髪の長い女だ」

「無駄にテンション高いって……椿のこと?ああ、木下さんのことかぁ」

「名前、なんて言うんだ?」

男の子は空の肩を強く掴む。

「うっ…。き、木下美桜!美しい桜って書いて美桜!」

空は痛みに顔を歪めながら言った。

「……みおう」

美しい桜……。

その時、廊下から楽しそうな笑い声が聞こえた。男の子はすぐに視線を向けた。

そこには、椿と楽しそうに話す美桜の姿があった。美桜の笑顔は優しくきれいで、本当に桜のようだと男の子は思った。

美桜をじっと観察することが多くなった。
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