four seasons〜僕らの日々〜
文化祭なんか、永遠に来なくていい。そう思ってしまう。ここでは美桜と二人きりで、何よりも幸せな時間が、残酷なほど早く過ぎていく。

「時を止められたらいいのにな……」

男の子はポツリと呟いた。

「えっ?何か言った?」

美桜が男の子を見つめる。

「いや…何でもない」

「……そっか」

美桜との練習が始まる。美桜は丁寧に優しく教えてくれた。

「すごい!もう覚えたの?」

美桜は笑う。男の子は嬉しくて、幸せになっていく。

しかし、すぐに気づいた。美桜が無理に笑う瞬間があること、蓮のことをずっと考えていることに……。

苦しそうな笑顔を見るたびに、男の子は美桜を強く抱きしめたくなる。自分の腕の中に閉じ込めて、守りたくなる。

でも、それを美桜は望まない。男の子は覚悟を決め、椿に話しかけた。



「……頑張ったね。えらいね」

廊下に泣き声が響く。

文化祭が終わった後、椿は蓮と別れた。

泣きじゃくる椿を、空が優しく抱きしめている。男の子はその様子をずっと見つめた。

蓮と椿が別れ、美桜がこれで苦しむことはなくなる。自分が望んでいた結末のはずだ。

しかし、嬉しさや喜びは心に穴が空いたようにすり抜けていく。

「……何だこれ……」

まるで自分のことのように、苦しくなる。

男の子の足は、自然に動いていた。
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