four seasons〜僕らの日々〜
「……おい」

椿と空の前に男の子は立った。二人は驚いた顔で男の子を見つめる。

「……」

男の子は椿の頭にそっと手を置いた。

「……お前の演技、とても良かった。……あと、おつかれ。あ、ありがとう」

椿の劇を気になって見に行っていた。舞台の上の椿は、『ジュリエット』だった。結末はハッピーエンドだったが、舞台にいたのは椿ではない。いつもと違う雰囲気に、男の子は目を奪われていた。

椿の目からさらに涙があふれる。

「……い、今まで……いっぱい傷つけて……ごめんなさい!……私…は……」

泣きながら椿が言う。空が「大丈夫だよ」と言いながら、抱きしめた。

男の子は少し微笑んで、椿に言った。

「お前の願いは、きっと叶う」

空の顔が赤く染まる。

男の子は二人に背を向け、歩き出した。そして、歩きながら呟く。

「……俺も、叶えたい」

美桜の隣に立ちたい。美桜とずっと一緒にいたい。俺のことで笑ってほしい。泣いてほしい。

……蓮には、渡さない!

静かになった廊下に、足音だけが響いた。
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