four seasons〜僕らの日々〜
「蓮くんと、美桜ちゃんと、椿ちゃんに歌ってもらおうよ!」

周りはさらに盛り上がる。女子の台詞に翔の名前がないのは、歌ってくれないと思っているからだろう。

誰も蓮たちの間に起こったことを知らない。話していないのはたまたまだと思っている。

翔と空の目が自然と合った。空の顔は焦っていて、翔も自分の表情が空と同じだと確信した。

「早速、美桜ちゃんたちに聞いてくるよ〜」

女子が教室を出て行く。翔はすぐに席から立ち上がり、女子のあとを追った。

「ねぇ、お願いしたいことがあるんだけど」

女子が美桜たちを集めて話している。美桜は蓮を見て辛そうな表情をしている。翔の胸が痛んだ。

気がつけば、翔は美桜の腕を掴んでいた。

「美桜はパーティーには参加しない。その日は俺と約束がある」

女子も男子も驚きの声を上げて、美桜と翔を見つめた。蓮は傷ついたような顔で翔を見ている。

「……俺も、美桜もパーティーには参加しない」

そう女子に睨みながら言うと、女子は「わ、わかった」と言いながら震えた。



その日の放課後、翔が図書室で本を読んでいると、ドアがゆっくり開いた。

反射的に顔を上げ、翔は自分の顔が熱くなるのを感じた。美桜だった。

図書室には翔と美桜以外、誰もいない。いつもはいる司書さんも会議でいなかった。この二人きりという空間が、翔の胸の鼓動を高鳴らせていく。

「……どうした?」

他人には決して見せない優しい笑顔を、翔は美桜に向ける。
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