four seasons〜僕らの日々〜
「その……ありがとう……。蓮くんと歌うの気まずいなって思ってたから……」

言いながら、美桜の目から涙がこぼれていった。翔は美桜に近づきその涙を優しく拭う。

「良ければ、一緒にどこかに行かないか?」

自然と口から言葉がこぼれた。

「えっ?」

「パーティーの日、どこかに遊びに行かないか?」

翔は体じゅうが熱く感じた。鼓動は止まることを忘れたかのようになり続けている。ドキドキしていると、美桜が少し笑って言った。

「そうだね…。どこか行こう」

「……ありがとう……」

美桜の言葉が嬉しくて、翔は美桜を抱きしめたくなった。その気持ちをなんとか押さえつける。

「また詳しいことは連絡する」

「わかった。……楽しみにしてる」

そのあと少し話し、美桜は優しく微笑みながら帰っていった。笑って帰ったことに翔は安心した。好きな人には、笑っていてほしい。翔の顔にも、優しい笑顔が浮かぶ。

しかし、その笑顔は一瞬で崩れ去った。

「あのさ……」

本の世界に再び入ろうとしていた翔の耳に、大嫌いな人の声が入り込んできた。
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