カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「つーかさ、お前人の心配なんかしてる場合かよ? まずは自分が相手、探さなきゃだろ? 一体何年男いないんだよ」

ぎく……。

それを言われると……言い返せないのが悔しい。

「べっ別に、いいでしょ。死ぬわけじゃないんだし」

「そりゃ死にゃしないけどな。死ぬ時一人ってのは寂しいぞぉ」

「余計なっ……」お世話デス、って言い返そうとして。
周りからチラチラ注目を浴びてることに気づいて、口をつぐんだ。

ったく、なんでこんな不毛な会話、職場でしなきゃならないのよ。

無言で椅子にどすっと座り込んだ私を放って、坂田は後ろを向くと、「家族って、いいですよねえ」って丸岡主任に話しかける。
「娘の寝顔見ると、マジ癒されるっつーか。あ、この前撮ったやつ見ます?」「あ、じゃ、うちのもみる?」なんて携帯を見せ合いっこ。

いいわよいいわよ。このやり取りも、もう慣れました。
ムキになるだけ時間の無駄だ。

仕事にとりかかろうとカバンを探った私の手は、「いいんですよおぉ」って怪談めいた声に、びくっとフリーズした。

まだそこにいたんだ、ラムちゃん。

「飛鳥さんは、仕事と結婚してるようなもんですからね」

ぴくぴくって、顔が引きつっていく。

「……ラムちゃん、何気にそれ、喧嘩売ってる?」
そんなつもりはないし。地味にズシッとくるんだけど。
全然フォローになってないしね?
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