カボチャの馬車は、途中下車不可!?
その姿を目で追いながら、「ねぇ坂田ぁ」ってつぶやいた。
「私たち、あんな素敵な上司の下で働けて、ほんとに幸せだよねぇ」
ほんとに、恵まれてると思う。
もっともっと。
あの人の期待に応えられるようになりたいな……。
「なぁ……オレは常々不思議でならないんだが」
「え?」
「なんで部長はダメなんだ?」
「……は?」
視線を坂田に合わせた。
「ダメ……って、何のこと?」
「男のオレから見ても、部長って完璧だと思うんだよな。男として」
「うん、そうね」
もちろん、異論はない。男としても、人としても、部長ほどの人はなかなかいない。
「な? 別にお前の王子様をどうこう言うつもりはないけどさ。でも、あんないい男がそばにいたら、まずそっちに目が行くだろ? 惚れるだろ、普通」
「普通って……そんなこと言われても」
——普通意識するでしょ?
そういえば美弥子も、同じようなこと言ってたっけ。
「…………」
言いよどんでいると、坂田はひょいっと肩をすくめた。
「まぁ、お前がいくら想ったとしても、部長ほどの人がお前を選ぶとは思えないから、失恋してヤケ酒に付き合わされるくらいがオチか」