カボチャの馬車は、途中下車不可!?

どんっ!!

強い力で背中をたたかれて、私は鉄板に向かってつんのめりそうになり、間一髪テーブルをつかんで体を支えた。

な、な、なに!?

ギョッとして振り返れば、腕を組んで仁王立ちしたエプロン姿のおばちゃんが、こちらをギロリと見下ろしていた。

「こぉんな二枚目にここまで口説かれて! あんた幸せもんだよ!? 何を迷ってるんだい!!」

「……へ?」

「そうだそうだ、あんたこの兄ちゃんのどこに不満があるってんだよ?」
隣席にいた作業服姿のおじちゃんまで、カップ酒を振り上げて加勢する。

「や、あの……その……」

「今時こんなこと言ってくれる男、いねえぜ? 俺ぁ聞いてて背中がかゆくなっちまったぜ!」

見回せば、今や店内にいた10数人のお客と店員、全員がうんうん、って頷いてる。

みんな、聞いてたんだ……。

冷や汗ダラダラの私とは対照的に、満面の笑みを浮かべたライアンは、すくっと立ち上がった。

「ありがとうございます皆さん。ご安心ください。たとえ何度フラれても、僕は諦めません。必ず彼女を振り向かせて見せますから」

そう言って、胸に片手を当て、恭しくお辞儀する。
ルックスと相まって、それはもう主演俳優のカーテンコールのようだ。

「おう! がんばれ金髪の兄ちゃん! 諦めるな!」
「いいぞぉ!」
狭い店内に、拍手と歓声、指笛までが乱れ飛ぶ。
< 181 / 554 >

この作品をシェア

pagetop