カボチャの馬車は、途中下車不可!?
どんっ!!
強い力で背中をたたかれて、私は鉄板に向かってつんのめりそうになり、間一髪テーブルをつかんで体を支えた。
な、な、なに!?
ギョッとして振り返れば、腕を組んで仁王立ちしたエプロン姿のおばちゃんが、こちらをギロリと見下ろしていた。
「こぉんな二枚目にここまで口説かれて! あんた幸せもんだよ!? 何を迷ってるんだい!!」
「……へ?」
「そうだそうだ、あんたこの兄ちゃんのどこに不満があるってんだよ?」
隣席にいた作業服姿のおじちゃんまで、カップ酒を振り上げて加勢する。
「や、あの……その……」
「今時こんなこと言ってくれる男、いねえぜ? 俺ぁ聞いてて背中がかゆくなっちまったぜ!」
見回せば、今や店内にいた10数人のお客と店員、全員がうんうん、って頷いてる。
みんな、聞いてたんだ……。
冷や汗ダラダラの私とは対照的に、満面の笑みを浮かべたライアンは、すくっと立ち上がった。
「ありがとうございます皆さん。ご安心ください。たとえ何度フラれても、僕は諦めません。必ず彼女を振り向かせて見せますから」
そう言って、胸に片手を当て、恭しくお辞儀する。
ルックスと相まって、それはもう主演俳優のカーテンコールのようだ。
「おう! がんばれ金髪の兄ちゃん! 諦めるな!」
「いいぞぉ!」
狭い店内に、拍手と歓声、指笛までが乱れ飛ぶ。