カボチャの馬車は、途中下車不可!?
呆然としている間に彼は席を離れていき、「ありがとうございます、応援よろしく」なんて、他のお客さんたちと握手を始めてしまった。
「ちょ、え……ライアン?」
選挙か!
「よし! じゃあ、今日はみんな僕のおごりです。たくさん食べて、たくさん飲みましょう!」
はぁ!?
ちょ、ちょっと何言ってるのよ?
「おぉ、兄ちゃんマジかよ、悪ぃな!」
「いただくよー!」
「こっちに納豆もんじゃ一つ!」
「はいよ!」
「こっちビール追加で!」
酸欠金魚みたいに口をパクパクさせる私の前で、次々にオーダーが追加され、店内はヒートアップしていく。
「お姉さん、あんたの恋人、太っ腹だねえ! もう20若けりゃ、あたしがお相手するんだけどねえっ!」
「自分のツラぁ、鏡で見てから言えよ!」
「なんだってぇ!? あんたの嫁よりマシだろ!」
「兄さん、こいついってみな」
気づくと、一升瓶を抱えたおじちゃんの横で、ライアンがグラスを持たされてる。
我に返った私は、急いで「ダメダメ」って叫んだ。
「私たち、車でしょっ」
「あぁ平気。ドライバー呼ぶから」
片目を閉じてみせた彼は、手の中のそれを一気に飲み干していく。