カボチャの馬車は、途中下車不可!?
金曜日、しかも久しぶりに傘の心配がいらない日ということもあって、表参道は大勢の人でにぎわってる。
その雑踏へと踏み出しながら、あれ——と、思い出した。
ライアンの会社も表参道だったっけ。
どのあたりだろう、近いのかな?
乱立するビルをあてどもなく見上げながら、考える。
そういえば彼、私の仕事のことは聞きたがるくせに、自分の仕事の話ってあまりしないのよね。
大学時代の友達を手伝ってるとか、IT関係とか言ってたけど。
具体的にどんなことしてるんだろう?
——信じちゃダメです!
——真杉さん、騙されてますよ!
突然沸いた疑惑に、視線が下がっていく。
嘘ついてるとか……ないわよね?
まさか。
まさか、ね?
今度、名刺欲しいって言ってみようかな。
仕事を頼みたいって言えば、会社のこと、教えてくれるかも……
「見てみて、あのガイジンさんのカップル! 超素敵!」
「ほんとだ〜どっちもモデルみたいに美形じゃん!」
「めちゃくちゃお似合い!」
「映画見てるみたーいっ!」
はしゃいだ声がして、引っ張られるように顔を上げた。
女子大生っぽい女の子たちが歩道の一角に固まって、きゃあきゃあ騒いでる。
何気なく、彼女たちが見つめている先に視線を移して。
そのまま全身が、凍り付いた。