カボチャの馬車は、途中下車不可!?

レストラン前に設けられたテーブルセット。
オープンエアのスペースに、目を引く大柄な白人カップルが座ってグラスを傾けてる。

男性は、ライアンだった。
見間違い……じゃない。確かに、彼だ。

隣に座ってるのは、純白のパンツスーツを着こなした、豊かな赤毛の女性。
厚めの唇にくっきり引かれた真っ赤なルージュが、白い肌に映えていて……華のある美しい人。

人込みにまぎれた私に気づくことなく、ライアンはリラックスした表情で、隣の美女に話しかけてる。
小気味よく行きかうネイティブイングリッシュは、突風のように耳をすり抜けて。私を置き去りにして、あっという間に消えていく。

道行く人たちの、視線とため息を独り占めしながら。
それを気に掛ける風もなく、ジェスチャーを交えて楽し気な笑い声をあげる2人は、まるでヴォーグの1ページのようにお似合いだ。

透明な分厚い壁が目の前にできてしまったみたいに。
彼の姿が、声が、遠のいていく。


——1本のバラは、『あなたしかいない』ですよ。

嘘ばっかり。
嘘なんでしょう?
どこまで? 全部?

その人は——誰?
聞いたら彼は……なんて答えるだろう?

恋人……とは限らない。
友達かもしれない。
でも……
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