カボチャの馬車は、途中下車不可!?
彼女はこんな風に年に何度か、海外へ行く。
発展途上国の子どもたちに基礎教育を普及させるって目的で活動してる、NGOのお手伝いで。
正規の職員じゃなく、あくまでボランティアとして参加してるから、渡航費も滞在費も毎回自腹だって聞いた時は驚いたっけ。
ほんとに頭が下がるっていうか、背筋がぴんと伸びる気がするのよね。
彼女と接してると。
「またブログに活動報告アップするから。よかったら見てみてね」
「はい、ぜひ! 楽しみにしてます」
◇◇◇◇
ビルから出た途端、むわっとした熱気がまとわりついて、うめき声が漏れてしまった。
上を見れば、厚い雲越しにも関わらず、太陽が存在感を放ってる。
まだ夏にもなってないんだから、もう少し手加減してくれたっていいのにな。
この時期って暑さにまだ慣れてないから、余計にキツイ。
身体の奥に沈殿した怠さを振り払うように、勢いよくヒールを鳴らして、最寄りの四ツ谷駅へと歩き出した。
周りには、私と同じように駅を目指すサラリーマンや大学生がたくさん歩いてるけど。
気のせいかな。
どの人も表情が明るいように見える。
プレ金だし、これから約束があるのかも。
美弥子なんて、今夜から家族旅行だって言ってたし。
坂田、ちゃんと仕事切り上げられるといいけど。