カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「そしたら……先週末……彼がうちに来て」
ええっと……
「その彼っていうのは、喧嘩しちゃった恋人のことね?」
「はい。自分が悪かったからやり直したいって。ずっと一緒にいてほしいって、指輪くれて。プロポーズもされて」
「そっか。元サヤってことね。よかったじゃない」
うん。そっちの方が絶対いい気がする。
「だから、そのアプリの人……ライさんていうんですけど、事情を話して、会えなくなったって連絡したんです」
「うん、そうしたら?」
「……納得できない、あきらめられないって」
え……
ついつい、「マジ?」って声に出しちゃった。
「アプリ使ってたこと、彼氏に知られてもいいのって言われて」
「な……っ」
何それ、脅迫じゃない!?
カッと血が上ってしまった頭を一生懸命落ち着かせながら、「でも」って言葉を探した。
「所詮はネット上だけのつながりでしょう? 個人情報教えてなければ……って、教えたの!?」
げ、ってたぶん私の顔にはその時、そう書いてあったと思う。
私を見た途端、青山さんがまた、しゅんって小さくなってしまったから。
「……仕事の話をしたときに、YKDで営業やってるってことだけ」
会社名と所属部署……それだけわかってれば、個人の特定くらいできるだろうな、今の時代。
彼女を責めたくはないけど……。