カボチャの馬車は、途中下車不可!?
「でもほら、マッチングアプリなんて、今時普通でしょ? 何もそれをバラされたってどうってこと……」
明るくフォローしようとした私の言葉は、青山さんの「ダメです!」って悲鳴みたいな声にかき消された。
「彼には、絶対知られたくないんです! 出会い系やってたなんて、そんなことっ! そういうの、嫌いな人だから……ちょっと考え方が古いっていうか。……それに……っ」
「それに?」
私が聞き返すと、彼女は一瞬躊躇した後、おずおずと言葉を続けた。
「その……ライさんが、すごくその……大人っていうか、慣れてる、感じの人だったから……わたしも背伸びしたくなったっていうか……そういう、慣れてるっぽい雰囲気、出しちゃって。メールの内容とか……ちょっとイヤラしいこと、書いちゃって。だからその、そういうの彼に知られると、本当に困るんです!」
イヤラしいメールって……
一体どんなの送ったんだ……うーん……。
「一度だけ会ってくれればいいからって。それであきらめるって。それで、実は今夜、これから会うことになってて。ホテルのラウンジで待ち合わせてて」
「ほ、ホテルっ!?」
なにそれ。
もうヤる気満々って感じじゃないの?
「……それはその、止めた方がいいって」
でも青山さんは、悲壮感を漂わせた顔で、「そうするしかないんです」って言う。
いやいやいや、
誰がどう考えても、絶対危険でしょ。
うーん……彼氏に行ってもらうのが一番だけど……。
それが無理なら——
これはもう、私が一緒に行くしかないな。
で、ソッコー連れて帰る。よし、それだ。
そう決めて、口を開きかけた時。
いきなりガバッと青山さんが頭を下げた。
テーブルにぶつかりそうなくらい、深く。