カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「この方をお席へ。お連れ様がお見えになるそうだから、ご案内もよろしく」

「かしこまりました」

「すみません、ありがとうございました」
頭を下げると、切れ長の眼差しが緩んだ。
「とんでもございません。それでは、ごゆっくりお過ごしくださいませ」

さっすが最高級ランク……スタッフの見た目も対応も七つ星、ってことね。
私はこっそり、息を吐いた。


案内されたのは、ラウンジ全体がよく見渡せる中央付近のソファ席だった。

「お連れ様をお待ちの間、何かお飲みになりますか?」

「あ……いえ、結構です」

首を振って彼に下がってもらい、腕時計に目を落とした。

約束の5時まで、あと5分。
もう、来てるのかな?

ソファにもカウンターにも、ビジネスマンっぽい一人客ならちらほらいるけど……どの人も私に関心を示さない。
待ち合わせじゃないってことよね。

「きゃっ……」
夢中で考えながら腰を下ろした途端、口から小さな悲鳴が飛び出した。

外資系ホテルらしい欧米人仕様のソファは、大きくてフカフカ過ぎで。
気を抜くと後ろにひっくり返ってしまう。

仕方なく腹筋に力をいれて浅く腰掛けたまま、私はその人が来るのを待った。
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