カボチャの馬車は、途中下車不可!?

きゅっとこぶしを作ってネガティブな自分を抑え込むと、待ち合わせのラウンジへ向かおうと辺りを見渡した。


このフロアで間違いないと思うんだけど……

きょろきょろしていると、フロントの脇、コンシェルジュデスクから男性が立ち上がった。
塩顔っていうんだろうか。シャープな一重瞼が切れ者っぽい雰囲気を醸す人で、かなりの美形。
年齢は……私と同じくらいかな? 

「いらっしゃいませ。本日はご宿泊でいらっしゃいますか?」

「いえあの……ラウンジで待ち合わせをしてるんですが」

「かしこまりました。ご案内いたします」
彼は物慣れた様子で微笑み、先に立って歩き出した。

私も急いでついていく。


中央のエレベーターホールをぐるりと回り込んで……目を疑ってしまった。
その向こうに、まだかなり広いスペースが現れたから。

そこがラウンジだった。
ゆったり配置されたソファ席とテーブル席の他、バーカウンターもあって、シェイカーを振るバーテンダーが見える。

「伊藤くん」
コンシェルジュの彼が手をあげて合図すると、「はい」ってキビキビした声が返事をして。
一人のウェイターが近づいてきた。
太陽の匂いがしそうな浅黒い肌に、くっきり整った目鼻立ちが印象的なイケメンくん。
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