カボチャの馬車は、途中下車不可!?

彼は本気でマンション、しかも山手線内側のバカ高い部屋を購入する気だったらしく。

賃貸で充分だという私の主張は、一顧だにされず。
昨日は一日ずっと、見学に連れまわされた。

なんとか即決は思いとどまってくれたけど。
来週には本気で引っ越し業者に連絡してるんじゃないかと、正直恐ろしい。

今夜はベッドに押し倒されて流される前に、ちゃんと話し合わなくちゃ。
よし、負けるな私。

叱咤するように、ペシペシっと両頬を叩いた。


「おはよう」


のんびりしたムードを一瞬で変える低い声が、フロアに響いた。

「おはようございまーす」
「おはようございます、新条部長」
顔を上げて、みんなと一緒に挨拶して。

「あぁ、おはよう」


あれ……?

なんとなく、二度見してしまった。

気のせい、だろうか。
部長のまとう空気が、どことなく重苦しいような……
眉間の皺のせい?

首をひねっていると、「真杉。ちょっと、今いいか」って、そのご本人に手招きされた。

後ろにくっついて営業部のエリアから離れると、部長の表情は顕著に硬くなっていく。
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