カボチャの馬車は、途中下車不可!?

「大人1枚、お願いします」

切符売り場のお姉さんは、現れた私に一瞬目を見張り——すぐに、それをにこやかな笑みに変えた。

「閉館は21時になります。ご注意ください」

さすがプロ。
感謝しながら、切符を受け取った。

そのまま入っていったのは、サンシャイン水族館だ。

ビルの上階にあるそこは、都会のオアシス的な存在として、よくマスコミにも取り上げられているところで。
平日夜の水族館に来る人なんか、そんなにいないはず……と選んだんだけど——

「カップルばっか……」

完全アウェイじゃないの。
毒づく、という表現がぴったりな声で、こぼしてしまった。

寄り添う恋人たちの邪魔をするわけにもいかず。
仕方なく、私ははじき出されるように、人けのない屋外展示へと足を向けた。


ぽっかり黒い空へ向かってあいた場所で、昼間の熱気をはらんだままの夜風に吹かれて立つ。


——海見るの、好きでさ。

水音に紛れて、優しい声がした。
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