カボチャの馬車は、途中下車不可!?
私は——すっと息を飲んだ。
そうだ……どうして思いつかなかったんだろう。
ホテル経営陣の、はるか上。
知らないわけ、ない。
それは、広告業界でも別格として扱われる巨大組織だったから。
確か……本社はシンガポール。
もとは貿易業から始まった、歴史ある会社だったと思う。
現在では製造から物流、小売、医療、観光分野まで、およそ網羅してない業界はないってくらい、様々な関連子会社を傘下に持っていて。
各国政府や財界にも強いパイプを持ち、その影響力は国家にも匹敵するとささやかれる、グローバル規模のメガカンパニーだ。
「じゃああなたやライアンは、そのリーズグループの……本社の人?」
「うーん……」って、伊藤くんは腕を組んだ。
「説明が難しいな。社員ってわけじゃなく……まぁ、一番それらしい言い方をするなら、契約社員、かな」
「け、契約社員?」
「そう。あれだけデカい企業になると、それなりにトラブルがつきものだってことは想像できるだろ? そんな時、上としてはできるだけ内々に、表ざたにすることなく、処理してしまいたいわけ」
私は頷いた。
たしかに、事件とセットでマスコミに名前が出るだけで、企業イメージには傷がつく。
たとえ、会社自体が犯罪と無関係であったとしても、だ。