カボチャの馬車は、途中下車不可!?

そうだ、ラムちゃんに一言言っておいた方がいいかな……
彼女の存在を思い出して、廊下へ出たところで立ち止まった。

でももう会場薄暗いし、探すの大変かな、どうしよう……ライン、送っておけばいいかな。
なんて躊躇っていたところへ。

「飛鳥さんっ!」
グイっと腕を引かれる。
ラムちゃんだ、なんてグッドタイミング!

「ちょうどよかった。私ねちょっと気分——」
「ありがとうございますぅっ!!」

「は?」

「飛鳥さんて、ガチで魔法使いだったんですねっ! 幸せを運ぶ魔法使いっ!!」

「ら、らむちゃ、……手、痛い……」
その勢いにたじろぎながら、とりあえず握られた手を抜こうとするんだけど。
聞いちゃいないらしい。

「飛鳥さんの愛のミッション、あたし、必ずクリアしてみせますから!!」

「……はい?」

「では、また後でっ!!」

びしぃっと敬礼してみせて。
どっぴゅん! とまたワープしていく。

な、なんなの……今のは?

愛の、ミッション……とか、なんのことだろう?
気になって、ドアから中を覗いてみると——

ラムちゃんの姿はもう、会場の端、ステージ下に立つ樋口さんのそばにあった。
爪先立ちながら彼女が何やらささやきかけると、樋口さんは長身をかがめて耳を傾け、照れたように、でも楽しそうに答えてる。
なんだかそこには……親密さみたいなものまで漂ってるような……?

ちょ、ちょっと待って。初対面、よね、あの二人?
えっと……どうなってるの?
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