カボチャの馬車は、途中下車不可!?

カチャッ……

少し外の風にあたろうと、私は中庭へ続くガラス戸を押し開けた。

隣接するビルとをつなぐ回廊の上に作られた、憩いの場。
ホテルで暮らしていた時に見つけたそこは、私のお気に入りだった。

珍しい樹木やハーブ、季節の花々であふれかえった空間も……夜だとあまり楽しめないな。
ぽつりぽつり、照明に照らし出された真っ黒な木々を見上げて、ため息をひとつつく。
そして人けのないそこをとぼとぼと進み、ベンチに腰を下ろした。


少ないながらも白く星が瞬く夜空へ、さっきのラムちゃんの姿を浮かべてみる。

上気した顔で、樋口さんだけを見つめてて。
彼女の周りだけ、ピンク色のライトに狙い撃ちされたみたいに、明るく輝いてたような。

オルオタ同士、気が合ったのかもしれない。
あれはもしかして、もしかすると……うまくいくかな。
いくといいな。
そしたら——飛鳥マジック再び?

「幸せを運ぶ、魔法使い……かぁ」

ほんとに私、何か「持って」たりして……なんてね。
ふふって、小さな笑いが漏れた。

幸せになるお手伝いができるのは、もちろんうれしいけど。
じゃあ……魔法使い自身の幸せは、誰が心配してくれるんだろう?

コンッて、足元を蹴りとばす。

結局、私はわき役なんだな。
主役じゃなくて。お姫様じゃなくて。

「キツイなぁ……」

彼との思い出を大切にしようって、ようやく前を向きかけたところだったのに。
振り出しに戻っちゃった……
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