新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「どちらかが忙しければ、臨機応変に時間ができたほうがやればいい。夫婦なんだし、それくらいお互いを思いやるのは普通のことだ。だから、最初から桜が家事を全部やろうだとか考えるな」
そっと背中に廻された手には多分、お玉が握られているのだろう。
彼の温かい腕の中で顔を上げれば綺麗な瞳と目があって、思わず視界が涙で滲んだ。
「正直、これまでまともに家事なんてしたことなかったから、最初は足を引っ張ってばかりになるかもしれないけど」
「……っ」
「でも、近衛にも褒められたんだよ。今日は夕飯作って桜の帰りを待つ……って決めたら、無意識に、いつもよりも仕事のスピードが上がってたらしい」
「湊……っ」
「だから、桜が謝る必要なんてない。妻としての務めなんて、桜が笑顔で俺のそばにいること以外にないんだから」
言い終えると同時に、彼の甘い唇が額に触れた。
反射的に瞼を閉じれば、胸いっぱいに幸せが広がった。
「実際、カレーが美味しくできてるかどうかも怪しいし──」
「──好きです」
「え?」
「私、湊のことが好きです。大好き」
自然と、言葉が唇から溢れだした。
精一杯、涙を堪えて彼を見上げて、眩しさに目を細める。
「まだ出会って間もないけれど……。でも、私、あなたのことが好き」
一度口にしてしまえばもう、止まらなかった。
腰に廻した腕にギュッと力をこめると、湊の胸の鼓動が優しく私の鼓膜を揺らした。
「湊が私を想ってくれるみたいに、私も湊を想いたい。大事にしたい……」
多分、湊と出会った瞬間から、すべては始まっていたのだろう。
優しくて、穏やかで。時々イジワルだけど綺麗で精悍な彼を好きにならずにいるなんて、無理だった。
「いつも、本当にありがとう。カレーも、すごく嬉しい。こんなに嬉しいカレー、初めてかも。だからねぇ、早く一緒に食べ──」
「──そんなの、あとだ」
「え……んんっ⁉」
「……っ。先に桜を食べたい。色々もう、俺も限界」