新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「お待ちしておりました!」
医師の言葉を聞いた瞬間、間に合ったのだという安堵から涙が溢れた。
部屋に入ると弱々しい機械音だけが響いていて、耳の奥で木霊する。
「おばあちゃん……おばあちゃん……っ」
何度呼び掛けても、おばあちゃんからの返答はない。
そして、私たちの到着を待っていたかのように──。しばらくして、跳ねていた機械音が止まった。
それは命の終わりを告げる音に変わって、医師からおばあちゃんが息を引き取ったことを知らされる。
「桜……」
「おばあちゃん……っ、ごめんね……っ」
子供のように声を上げて泣いた。
それでも、おばあちゃんを一人で旅立たせずに済んだという思いが、唯一私の心を救ってくれる。
……湊の、おかげだ。
湊が仕事を切り上げて、ここに連れてきてくれたから、おばあちゃんの最後にも立ち会えた。
何より、私達の到着を待っていてくれたであろうおばあちゃんのお陰でもある。
本当は……朝、おばあちゃんの容態が急変したことを聞いたときから、おばあちゃんのところに来たかった。
だけど、それはおばあちゃんが望んだことではない。
おばあちゃんなら仕事より自分を優先したことを怒ると思ったから──私は心を奮い立たせて、仕事へと向かったのだ。