新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
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「お疲れ様です」
終業時間いっぱいまで仕事をして、荷物を持った私は湊の待つ社長室へと向かった。
社長室に入ると既に近衛さんの姿はなくて、思わず首を傾げてしまう。
「お疲れ様。それじゃあ帰ろうか」
「え……あの、でもお仕事は……」
「今日はもう終わったよ」
言いながら席を立った湊は慣れた手つきでコートを羽織ると、私のそばまで歩いてきた。
そうして腕を伸ばして私の身体を引き寄せると、そっと唇を額に寄せる。
「初めて一緒に帰れると思ったら、驚くほど仕事が捗った」
子供みたいなことを言って、湊は私の手をキュッと掴んだ。
「ということは、これからはほぼ毎日仕事が捗って近衛に喜ばれるな」
「ふふっ」
……湊の、こんなところも好き。
そう言ったら彼は、どんな顔をするだろう。
そうして彼に連れられるまま会社を出ると真っ直ぐに、私たちは家路を急いだ。