新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「……トウジさんは足を車に挟まれてて動けなくて。でも、そのそばでずっと、トウジさんを励ましてくれた夫婦がいた」
──その夫婦も、頭と身体に怪我をしていたのに。
それでも二人は懸命に、「頑張れ」と声を掛け続けていたのだと湊は続けた。
「その夫婦も亡くなったっていうのは、ニュースを見てあとから知った。二人は……俺にも"大丈夫だから、あなたは早く逃げなさい"って懸命に声を掛けてくれて……。俺は今でもハッキリと、そんな二人のことを覚えてる」
──ああ、そんな。
その夫婦が誰なのかなんて──聞かなくてもわかってしまった。
「桜のご両親だ。本当に、二人には感謝しかない。あのとき、なかなかトウジさんのそばから離れようとしなかった俺に、あの二人が懸命に声を掛けてくれたから……今の自分がいるとも、俺は思ってる」
「……っ」
その言葉を聞いた瞬間、涙が溢れた。
あの日は、同窓会帰りの母を父が近くの空港まで迎えに行ったのだ。
遅くなるかもしれないから、桜は、おばあちゃんの家で待っていてね。
そう言われて私は寂しさを覚えながらも言われたとおり、両親の指示に従った。