新妻独占 一途な御曹司の愛してるがとまらない
「……そんなに、知りたい?」
「え……?」
「いや……うん。それはそうだよな。俺も、しっかりと伝えるべきだった」
そこまで言って、「ふぅ」と短い息を吐いた彼は、名残惜しそうに身体を起こしてベッドの縁に腰掛けた。
慌てて身体を起こした私も乱れた服と髪を整えて、彼の隣に腰掛ける。
「俺が初めて桜を知ったのは──もう、五年も前のことだ」
隣に座った私を見て愛おしそうに髪を撫でた湊は、ぽつりぽつりと話しを始める。
だけど──五年前って。
その時の私はまだデザイン学校に通う学生で……ネットショップの『Cosmos』すら始めていない、時期のことだ。
「俺は父からLunaを任せられたばかりの頃で、色々と……これからの方向性を探って迷っているときでもあった」
足の間で長い指を交差させ、どこか遠くを見る彼は当時のことを思い出しているのだろう。
「Lunaは親会社であるWith Weddingに付随した、ウェディングジュエリー専門店というイメージが世間に浸透していた。そこからどうやって、新しいブランドイメージを作り上げていくのか……。決して、簡単なことじゃない。だけど絶対に成し遂げないと、Lunaに未来はないことも、俺はわかっていた」