悪しき令嬢の名を冠する者
「残念ながら見えないわね。それでも私にとっては、ただの戯れにしか聞こえないわ。私はエレアノーラ。それ以上でも、それ以下でもない。無駄口を叩くなら、もう消えて頂戴。目障りなのよ」

「承知しました。では、もう一つだけ。レイニー様は花と宝石、どちらを美しいと思いますか?」

「宝石よ。花には何の価値もない。散って枯れるだけの存在は煩わしいだけ」

 満点だと思った。もしもコレが何かを確かめる為のものなら紛れも無い正解だ。

「成る程。アンタは花も愛でてくれるんだね」

 唐突に膝を折った彼が柔らかな微笑を携えて跪く。端整な顔を見降ろしていれば左手を取られた。

「なら忠誠を誓いましょう。今後、アンタの傍を離れず守り抜くと、この嫋やかな指先に誓いの口づけを。マイ・フェアレディ」

「離しなさい! ぶ、無礼者!」

 そう言って手の甲に軽い口付けを落とし、翠眼で此方を見据えるフィン。動揺を隠すように放った言葉は上擦っていて、頬が上気していくのが分かった。
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