悪しき令嬢の名を冠する者
「でもね、貴女の目の前で食べ物を零す紳士がいたらどう思うかしら? 不快でしょう?」

「そうね……いい気持ちにはならないわ」

「そういうことよ」

「え?」

「貴女は目の前に座る人間の為に美しく食べて〝あげる〟の。
 自身は褒められるし、周りの人間も得が出来る。とてもいいことだと思わないかしら?」

 でも、と象りそうになり口を噤む。そんな私に気付いたのだろう。彼女は眉尻を下げ目を横に逸らした。
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