君とのゲームの行方
 あの直樹は、そう。

 女の子に告白する時の、直樹。

「あ、あんさ、茜」

 椅子に座っている茜の横に立ち、直樹が噛みながら言う。茜は箸を動かす手を止め、直樹を見上げた。俺は動けなかった。

 直樹って、普段は明るいおバカキャラなくせに、恋愛に対してはすごく積極的で。気に入ると、音速で告る男なのだ。しかも、なりふり構わず、周りに誰がいても、構わず。

「す、好きなんだけど」

 やはり少し自信なさげに言う。茜と一緒に昼食を取っていた子が、激しくむせ始める。茜は少し驚いたような顔をして、直樹を見ていた。

 てゆーか、普通こんな教室で言うか? 馬鹿じゃねーのあいつ。普通言わねーだろ。馬鹿すぎて笑える。

 ……だけどむかつく。

「付き合ってくれない?」

 茜の友人のむせる声がこっちまで響いてくる。周囲は特に直樹に注目していなかったので、直樹の突然の告白は、どうやら茜とむせている子にしか聞こえていなかったようだ……いや、あと耳をすましていた俺か。

 茜はしばらくの間、目を見開いて驚きの眼差しを直樹に向けていたが、ふっと小さく笑うと、直樹に向かってこう言った。

「考えとく」
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