龍使いの歌姫 ~神龍の章~
連れていかれた二人
「おいこらこの変態が!おいらのティアから離れねぇと、てめぇをシバくからな!!」

ゼイルの額には青筋が浮かんでおり、本気で怒っているのだろう。

手をボキッと鳴らしている。

「落ち着け。下手な動きは、ティアを傷付ける切っ掛けになりかねない」

アルに冷静に諭され、ゼイルはうっと押し黙ると、悔しげに手を握りしめる。

「……レイン……」

ティアの不安そうな顔に、レインは覚悟を決める。

「………分かりました。貴方達に従いましょう。ですから、その子を離してください」

「ようやく自分の立場が分かったようだな」

レインは弓矢を捨てると、フードの人間達の元へと歩く。

「待て!」

アルは咄嗟にレインの腕を掴んだ。

「……悪いがこいつは渡さない」

それだけ言うと、ゼイルに視線を送ってから、アルはティアを捕まえている男の背後に素早く回り込む。

「何?―ぐはっ」

男の足を蹴り飛ばすと、男はティアを放り投げ後ろに倒れる。が、倒れる寸前首根っこを掴んで、背負い投げた。

「きゃあっ!」

「よっと……大丈夫か?」

放り出されたティアを受け止め、ゼイルはそのまま抱き上げる。

「ゼイル、ティアを連れて逃げろ」

「兄貴は?」

「こいつらを何とかしてから追い掛ける」

アルの言葉に、ゼイルは疑念の籠った視線を送るが、アルの強さを信じ頷く。

「分かった!」

ゼイルはティアを連れて、そのまま走っていく。
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