龍使いの歌姫 ~神龍の章~
「………この人数相手に戦う気とはな。随分無謀だな」

竜騎士の同僚の呆れた声に答えず、アルは槍をその場に捨てた。

「「?」」

アルの行動の意味が分からず、竜騎士やフードの人間達、レインまでもが、訝しげな視線を送った。

「……アル?」

「……こいつを連れていくなら、そうすれば言い。その代わり、僕も一緒に連れていけ」

さっきのは、ティア達を逃がすためにしたことで、アルはフードの人間達と戦う気は無かった。

あの後も、ティアを人質として連れていかれては困る。

だから、逃がした。

「荷物が一つ増えるくらいで、ガタガタ言う気は無いだろ?」

「……んじゃ、希望通り連れていくか?」

同僚は竜騎士を見ると、竜騎士は無言で頷いた。

アルを今ここで叩きのめそうとしても、労力の無駄だろう。それほどの実力を持っているのは、素人目でも分かった。

「どうして?」

レインの心配そうな顔をちらりと横目で見てから、アルは前を見る。

「……お前を、一人に出来るわけないだろ」

「……ごめんなさい」

レインは申し訳なくなった。アルやゼイルを巻き込み、ティアまで危険な目に合わせてしまった。

それは、レインのせいではないのだが。レインは自分を責めずにはいられなかった。

「謝るな。お前は悪くないだろ」

「さて、お喋りはそれくらいにしてくれるか?」

同僚は一歩前へと出る。

「忌み子のお二人さん。お前達を、城へ連行する。大人しく命を受けよ」

「「…………仰せのままに」」

アルとレインは声を揃え、淡々と言い放った。
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