龍使いの歌姫 ~神龍の章~
ゼイルとティアは、一度龍の谷へと戻った。

『……レイン……アル……』

『心配すんなよティア!兄貴と姉貴ならきっと無事だ』

励ますようにそう言いながらも、ゼイルも心配だった。

『おじじ様にお話しに行くの!』

『そうだな。爺さんに話してみるか』

ゼイルとティアは長老の元へと向かう。

『おじじ様!大変なの!!』

『……レインとアルのことじゃな』

『爺さん、知ってたのか?!』

ゼイルの言葉に、長老は頷いた。

『……やはり、歌わずとも奴はレインを見付けてしもうたか』

『爺さん、分かるように言ってくれよ?!』

『レインとアルは、恐らくもう城へ連れていかれたじゃろう』

長老が落ち着いた声音で言うと、ゼイルは驚いて長老に詰め寄る。

『どういうことだよ?!』

『落ち着け』

長老に諭されても、落ち着いてなどいられない。

『落ち着いてられっか!おいら、兄貴達の所へ行って―』

『ゼイル。今二人の元へ行っても、二人を危険な目に合わせるだけじゃ。アルがお主達を逃がした意味が無くなるじゃろ』

ゼイルの言葉を阻み、長老はそう告げる。

『……逃がすためって……じゃあ、兄貴はわざと?』

『恐らくの。お主達を利用されては困ると思うたのか、逃がしたのじゃろう。ここなら安全じゃからの』

『………』

『ゼイル』

ティアの不安そうな声が聞こえ、ゼイルはティアを見下ろす。

『……おいら』

『ゼイル。今は機会を待つのじゃ。ティアもの……運命が動く瞬間は、もうそこまで来ておる』

だから、それまで耐えろと、長老は言った。

(……ごめん。兄貴、姉貴。不甲斐ない弟で……)

だが、絶対に二人を助け出す。ゼイルはそう誓った。

『……レイン……アル』

ティアにとって、大切な両親。

最初こそレインの言うことしか聞かなかったが、アルの言葉も段々素直に聞くことが出来るようになった。
< 27 / 76 >

この作品をシェア

pagetop