龍使いの歌姫 ~神龍の章~
「何をしている。娘」

「はぁ、はぁ……っ……」

レインは床に両手を付き、荒い息を吐き出す。

神龍の姿を見た途端、悲しくて、後悔のようなものが込み上げてきた。

ポタポタと涙が溢れ、汗も床へと落ちる。

「うっ………うぁ………っ!」

痛い。

心臓がドクドクと脈打ち、しゃくりをあげそうになる。

けれども、レインは唇を噛み締めて乱暴に涙を拭い、足に力を入れて立ち上がる。

キッと睨み付けるように、結界の中にいる神龍を見た。

目元に力を込めていないと、また涙が溢れてしまいそうだ。

(……どうして……?)

自分でも分からない感情に、レインはただ手を握りしめて耐える。

「自分が食われると分かって、恐怖でも沸き上がったか?」

「……食わ……れる?」

サザリナを振り返り、レインは呆然と呟いた。

この人は一体何を言っているのだろうか?食われるとは、つまり―。

「言ってなかったな。神龍様の一部、つまりは神龍様に食われる生け贄だ」

「!!どういうことです?!」

自分は殺されるためにここに来たわけではない。

それなのに、この人はレインを殺そうとしているのだ。

生け贄という言葉を使って。

「お前は最も心の清らかな娘に選ばれた。だから、神龍様へと捧げる」

サザリナは神龍へと視線を移す。

「見ての通り、神龍様は病に犯されている。これ以上病が広がらないためにも、生け贄を捧げるしかない」
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