龍使いの歌姫 ~神龍の章~
「竜騎士?レインはどこ?」

レインが神龍と対峙していた時、セレーナはレインのいた部屋へと戻ってきた。

「分かりませんが、恐らくサザリナ様の所かと」

竜騎士が答えると、セレーナは竜騎士に詰め寄る。

「サザリナですって?!何であの占い師が、私のレインを連れていくの?!」

「………」

竜騎士は答えられなかった。

(……生け贄に選ばれた彼女は、恐らくはもう神龍様に食べられているだろう)

だが、それをセレーナに伝える訳にはいかなかった。今のセレーナは何をしだすか分からないのだ。

(……彼女が……生け贄……)

「っ!……姫様、私は少しお側を離れますが、姫様はここにいてください」

「あら?何故?」

不思議そうにこちらを見上げる瞳に、竜騎士は何も写していないかのような、静かな瞳で見返す。

「……もしかしたら、またここに戻ってくるかもしれません。入れ違いになってはいけませんから」

レインがここに戻った時、セレーナがいないと困ると、竜騎士は言う。

「ああ!確かにそうね!じゃあ、私はここで待ってるわ!……ふふっ、楽しみね」

「では、失礼致します」

部屋を出ると、竜騎士は城の地下へと向かうために廊下を走っていく。

(何故、俺は……)

彼女が死ぬかもしれないと思った瞬間、体が動いていた。

「くっ……」

訳の分からない自分の行動に苛立ちながらも、竜騎士は走る速度を緩めなかった。


「はぁ、はぁ、はぁ………っ……はぁ」

荒く息を繰り返し、レインは神龍を見上げている。

振り下ろされた刃を、ギリギリで避けたが、後一歩動くのが遅ければ、真っ二つにされていただろう。

『…………』

「ほぅ。まさか避けるとは」

サザリナは感心したようにレインを見ていた。大抵の者は恐怖で体が動かず、すぐに体を引き裂かれる。

「……私はまだ……死にたく……ない!」

アルやティアやゼイル。

大好きな皆といるためにも、この国の真実を知るためにも、今ここで死んでる暇なんて無い。

「意思の強い娘だ。だが、お前が死ぬ運命は変えられない」

「……そんなの、分かりません」

変えられないなど、何故分かるのだろう。自分の運命ならば、自分で変えられる筈だ。

変えられないと諦めたくはない。何としても変えてみせる。

『ガァァァァァ!』

再び刃が振り下ろされ、レインは横へと転がるように飛び退く。

だが、少し反応が遅かったせいか、肩に痛みが走った。

「うぁっ!!」

血が流れ、肩の部分の布は切り裂かれたことで、捲れていた。

「!それは!!」

「うっ………?」

サザリナは、レインの前に転がった物に目を見開く。

「それは……まさか、龍笛?!」
< 41 / 76 >

この作品をシェア

pagetop