龍使いの歌姫 ~神龍の章~
甦った記憶
「!……ぐっ、ぅ」

廊下を走っていた竜騎士は、頭の中で何かの割れる音が聞こえた。

不思議に思うと、酷い痛みが襲い、その場に膝を着く。

「……俺……は……」

何かの映像が頭の中に浮かぶ。

これは、城に来た頃の記憶だろう。

自分を庇い、命を救ってくれた少女は、優しい眼差しでこちらへ手を差し出す。

「……」

その少女は―。


「いやぁぁぁぁぁ!!痛い、痛い、痛いー!!」

レインの部屋にいたセレーナも、頭を抱え込んでベットへと顔を押し付ける。

頭の中がぐるぐると回っている感覚。

何がが、頭の中に写し出される。

「………あ………ああ!」

これは、記憶だろうか?幼い頃の記憶が、波のように襲ってくる。

幼い自分の隣には、いつも誰かがいた。

明るくて、優しくて、内気な自分の手をいつも握って、引っ張ってくれていた存在。

生まれたのは自分より少し後。

自分とそっくりな顔を持った可愛い妹。

神龍や竜が、自分の妹を独り占めしていたのが嫌だった。

神龍のせいで、彼女はいなくなってしまった。

「……そうだわ」

そう、思い出した。

雪のように白い髪と、炎のように真っ赤な瞳を持った少女の顔と、その名前を。

「そうよ。………やっぱり、そうだったの」

自分が何を失ったのか、ようやく思い出せた。

「私の妹………エレイン」

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