龍使いの歌姫 ~神龍の章~
「……光ってる」

「何故だ?!その龍笛は、龍王の血筋の者しか使えん筈だ。……まさか、お前は龍笛を吹く資格を得たと?……馬鹿な!あり得ぬ!」

レインの横笛が光り出したことで、サザリナは狼狽えた。

(りゅうぶえ……資格?……)

確信はない。だがサザリナの言葉で、レインは一つの可能性を思い付いた。

『………』

神龍は龍笛が光った途端、動きを止めてこちらを伺っている。

「………姉さん」

小さく呟き、ギュッと横笛を握ってから、それを顔の前まで持ってくる。

(私に、力を貸して)

今なら吹ける。何故か知らないがそんな気がした。

横笛の一番大きな穴へと、息を吹き込む。

すると、柔らかな戦慄が奏でられた。

『………』

「嘘だ……何故、お前みたいな忌み子が………」

サザリナは膝を付き、レインが横笛を奏でている様子を見ていた。

『……………』

神龍はジッとレインの奏でる音楽を聴いていたが、やがてゆっくりと丸まった。

そして、目を閉じて耳を傾けている。

「止めよ娘!!」

「!」

サザリナの怒鳴り声に驚き、レインは音を止めた。

その瞬間、弾かれたように神龍は起き上がり、刃を振り下ろした。

「きゃっ!」

咄嗟のことで、反応できなかったレインは、横笛を放り投げてしまう。

「!横笛が!」

レインは横笛を拾おうと走り出す。だがその前に、神龍は横笛に手を振り下ろした。

どうやら、壊そうとしているらしい。

「……駄目!」

姉の形見を、守らなければ。そう思うのに、何故か別の思いも渦巻いた。

(それを……壊さないで!!)

壊されてはいけない。そうでなくては―。

だが、無惨にもレインが手を伸ばすより先に、横笛は神龍の刃によって真っ二つに裂かれた。

その瞬間、レインの中で、何かが割れるような音がした。

「あ……ああ…………っ、いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
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