龍使いの歌姫 ~神龍の章~
「……はぁ」

ここから出る方法を何も思い浮かばないまま、アルはジッとしていた。

そのお陰で肩や腕が痛い。

見張りが来る様子が無いし、不気味なくらいに静かだった。

(先程、地震のようなものを感じたが……)

この下に、何かあるのだろうか?

(……まさか、神龍様が)

「!」

考え込んでいたアルの耳に、不意に足音が聞こえた。

サザリナや兵士とはまた違う、軽めの音だ。恐らく一人だろう。

「……誰だ?」

牢屋の明かりは、ロウソクで補われているので、誰も代えに来なかったから、とっくにロウソクは溶けてしまった。

そのため、牢屋は薄暗く、やって来た人間の顔が見えない。

「…………」

牢屋の前で止まった人影は声を発すること無く、ただ黙ってこちらを見下ろしていると気配で分かる。

「……お前が誰なのか知らないが。レインのことを教えろ」

「っ!」

息を飲む音が聞こえたが、アルは構わず続ける。

「あいつはどこにいる?まさかもう生け贄にされたのか?……もしあいつを傷付けたら、絶対に許さない。あいつが死んだら、僕はお前達を全員殺す」

「………」

目の前の人物はやはり答えず、身じろぎをする。

「?」

黙って様子を伺うと、ガチャリと錠前の外れる音がした。

そして、コツコツと足音をたてながら、こちらへと歩いてくる。

足音はアルの少し前で止まった。

「……お前は、誰だ?」

「……私にも、もう分からないわ。アル」

聞き覚えのある声に、アルは目を見開いた。

「レ……イン?」
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