龍使いの歌姫 ~神龍の章~
どれくらい泣き続けたのか、窓の外は暗くなっていた。

(………ティア、皆)

龍の谷の皆に、とても会いたくなった。

レインは顔を上げると、よろよろと部屋の扉へと近付く。

アルはこの城の、牢屋に囚われている筈だ。

「………今の私を見たら………アルは……」

どう思うだろうかと考えると、足がすくみそうになる。

だが、今何故かアルに会いたかった。自分のことを聞いてほしかった。

レインは部屋を出て、兵や他の人間に気付かれないように気を付けながら、牢屋へと向かっていった。


「……おのれ。レオン」

サザリナが起き上がるとレインの姿がなく、誰かが連れていったのだと気付いた。

自分や、この城の人間すべての記憶を、「エレインに関する記憶」を封じ、書き換えることが出来たのは、自分よりも膨大な魔力を持つ者だけ。

恐らく、龍笛が記憶を呼び覚ます鍵だったのだろう。あの中にレインの記憶を封じ、レインが思い出せば、レインが関わった人間の記憶も呼び起こされる。

「……レオン。お前の目的は何だ?」

神龍しかいないこの場所で、答えなど返ってくるはずも無く、サザリナは悔しげに唇を噛み締めた。


「………動き出したか」

城の屋根に座りながら、レオンはやれやれと肩をすくめる。

「まさか、龍笛が壊れてしまうとはね。……これは、やっぱり運命なのかな?」

そうだとしたら、誰にも変えられないのだろうか?

「……まぁ、いいか。思い出してしまったのなら仕方がない。僕は僕の役目をこなすだけだ」

レオンは立ち上がると、夜空の闇の中へと消える。
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