龍使いの歌姫 ~神龍の章~
そして次の日から、神龍の様子が変わっていった。

エレインが来ても返事をしてくれないし、綺麗だった金色の鱗は、黒く変色していた。

まだそこまで酷くは無かったが、心配になって声をかけても、神龍は返事を返してくれなかった。

嫌われてしまったのかと思った。自分が知らないうちに、何かしてしまったのかと。

暫く近付かない方が良いのかと思い、エレインは神龍の元へと行かず、セレーナと共に過ごしていた。

セレーナはエレインが神龍や竜の元に行くことが嫌だったようで、エレインが部屋に来ると、セレーナの遊びが終わるまでは、部屋を出られなかった。

他の竜の役目は、神龍と同じように穢れを溜め込むこと。

だが、神龍のように浄化することは出来ず、城の竜は鱗が真っ黒で、穢れを溜め込みすぎた竜は、首を落とされた。

だから、どうにかして竜を助けてあげたかったが、エレインに出来ることなど何も無かった。

エレインが神龍の元に行かなくなった日から、更に数日たったある日のこと、またセレーナのふりをして、神龍に会わなくてはいけなくなり、数日ぶりに神龍の元へと訪れた。

すると、大きな半球の結界が張られており、あれは何だと聞くと、サザリナが答えた。

「神龍様は病に犯されてしまっています。それ故暴れてしまうのです」

つまりは、鳥籠のようなものだろうか。

「そんな!神龍様は病にかかったんじゃないわ!皆の穢れを溜め込みすぎたのよ!?」

竜達を観察していて、エレインは気付いた。

竜達の鱗の変色の仕方が、神龍ととても似ていたことに。

「?何を言って…………!エレイン様」

「!……あ……」

「……何故エレイン様がここに。セレーナ様はどうされたのです?」

エレインは自分がセレーナのふりをしていることを忘れていた。

セレーナは何があっても、声を張り上げたりなどしない。

「それは……セレーナは、神龍様とお会いになるのが……その……」

「……神龍様と、心を通わせたのは、エレイン様の方ですか」

サザリナの冷たい声に、エレインの肩は跳ねた。

「そうであってはならない。わたくしの占いでは、セレーナ様が心を通わせられる筈だ。そして、エレイン様は……」

「………?」

「……お戻りなさい。エレイン様」

サザリナに睨み付けられ、エレインはその場を去る。

自分がセレーナのふりをしていたことは勿論怒っているだろう。だが、それとはまた別の理由で怒っている気がした。

そしてこの日が、エレインが城にいられる最後の日となった。
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